脳梗塞を経て堺で居場所づくりに取り組む辻村早織さん
「普通に見えるけれど、普通に生活するのが大変」という障害と向き合いながら
インタビュー・特集


今週の堺人(サカイビト)Vol.6
地域に“居場所”をつくる
27歳で脳梗塞を経験し、高次脳機能障害とともに生活することになった辻村早織さん。接客業など人と関わる仕事を経て、現在は地域での居場所づくりや当事者会、バザーやマルシェの活動に関わっている。病気をきっかけに見えてきた「社会とのつながりの難しさ」を出発点に、誰もが少しずつ外に出られる場づくりに取り組んでいる。
画像:辻村早織さん
プロフィール
氏名:辻村 早織
職業:地域活動(居場所づくり・当事者会・イベント運営など)
居住地:堺市
※さかいSDGs推進プラットフォーム登録/大阪産PRサポーター/堺市「高齢者見守りネットワーク(見守りねっと)」拠点。「福町サステナブル@クロスコミュニティ」活動メンバー(堺市中区福田地域共生協議会)
Q1
これまで、どんな仕事をしてきましたか?
私はこれまで、接客業やクレーム対応の仕事など、人と関わる仕事をしてきました。もともと人と話すことや、人に喜んでもらうことが好きでした。
ところが27歳の時に脳梗塞で倒れ、高次脳機能障害という後遺症が残りました。それまで当たり前にできていたことができなくなり、一度社会から離れることになったのです。
その後、リハビリや通院を続ける中で、同じように病気や障害で社会との関わりが途切れてしまう人がたくさんいることを知りました。現在は、地域での居場所づくりや当事者会、バザーやマルシェなどの活動を通して、人と人がつながる場所づくりに関わっています。
Q2
いまの生活の中で「自分らしい日常だ」と感じる場面とは?
拠点としているフクダスタジオ(堺市中区)でイベントの準備をしている時や、バザーやマルシェで地域の人と話している時に、「これが自分の日常だな」と感じます。
特別なことではなくて、誰かと「元気?」と声をかけ合ったり、コーヒーを飲みながら話をしたり、音楽を聴いたり、そういう時間があることが、今の私にとっての「自分らしい日常」です。
病気になる前は、こういう時間が特別なものだと思っていませんでした。でも、いまはこういう何気ない時間が、自分にとって一番大切な時間になったのです。
Q3
堺で暮らしてきた中で「ここで生きてきた実感がある」と感じる場面とは?
病気をしてから、地域の人にたくさん助けてもらいました。リハビリから帰ってきた時に「おかえり」と言ってくれる人がいたこと、イベントをすると「行くで」と顔を出してくれる人がいること、そういう時に「ここで生きてきたんだな」と感じます。
大きなことをしたわけではないけれど、誰かが自分のことを覚えてくれていて、気にかけてくれている。そういう関係があることが、ここで生きてきた実感につながっています。
Q4
人生の中で「大きな転機だった」と感じている出来事とは?
やはり27歳の時に脳梗塞で倒れたことが、人生の一番大きな転機でした。でも不幸話ではありません。それまで当たり前にできていたことができなくなり、一からやり直すような感覚でした。
あの時の自分が困らない場所作り
病院を出たあとに行く場所がないことや、「普通に見えるけれど、普通に生活するのが大変」という障害があることを、自分自身の経験として知りました。
この経験があったからこそ、今、地域の中に居場所を作る活動をしています。「あの時の自分が困らない場所を作りたい」というのが活動の原点です。


Q5
これからの人生について、現時点で考えていること。
これからは、障害がある人だけの場所ではなく、子どももお年寄りも、障害がある人もない人も、誰でも来られる場所を地域の中に作りたいと思っています。病院を出たあと、すぐに社会に戻るのが難しい人もいるからです。
家に閉じこもるしかない社会ではなく、少しずつ外に出られる場所や、人とつながれる場所が地域の中にあれば、人はもう一度社会とつながることができるのではないでしょうか。
医療と福祉と地域と仕事、その間をつなぐような場所を作ることが、これからの人生でやりたいことです。
※高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、脳の損傷によって、記憶や注意、段取りなどに影響が出ることがある障害のこと。外見からは分かりにくく、日常生活の中で困りごとを抱える場合もあるが、その現れ方や程度には個人差がある。
記事:笹野 大輔
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