堺の人は堺のことを知らない
編集長ご挨拶&第1回コラム
連載・コラム


はじめまして。サカイタイムズ編集長の笹野大輔です。2025年1月にこのサイトを立ち上げてから、3カ月が経ちました。先日、「サカイタイムズ」とGoogleで検索したところ、ようやくトップに表示されるようになりました。
実のところ、これは簡単なことではありませんでした。「サカイ」といえばサカイ引越センター、「タイムズ」といえば駐車場のタイムズ。検索結果の多くはこの2社に関連するページが占めており、「サカイタイムズ」と検索しても、しばらくはトップに表示されることはなかったのです。
サカイタイムズはSNSも使わず、広告も出さず、SEO対策らしいこともしていません。いまや個人の自由な口コミでさえも業者が関わる時代において、不自然な宣伝など小細工のようなことをしたくなかったのです。淡々と、堺市のローカルニュースを出し続けてきました。そうした地道な積み重ねをGoogleが認識してくれたのだとすれば、静かに嬉しく思っています。
堺の人は堺のことを知らない
この3カ月の間に、堺市役所やJ:COMの方々からも連絡をいただくようになりました。ある日、堺市の職員の方と面談した際、その方が神戸市出身であることを知りました。私が人口約78万人の福井県を例に出し、「福井には福井新聞と福井テレビがある。けれど、人口約80万人の堺には堺のことを日常的に伝える地元メディアがほとんどない。だから『堺の人は堺のことを知らない』のではないか」と話すと、その方はすぐにこう返されました。
「わかります。神戸には神戸新聞とサンテレビがあるから、神戸の人は神戸のことをわりと知ってるんです」
この一言を聞いたとき、私の中で確信に変わりました。堺には地元のことを日常的に伝えるメディアがなく、情報が足りていないことが、あまりにも当たり前になってしまっていることを。
私は現在、ニューヨークを拠点に取材や編集の仕事でメディアに関わり続けています。ニューヨークでは市民が、地元の政治や文化、アート、イベント、地域コミュニティなどのニュースに日常的に触れています。それがニューヨークへの愛着を育み、街をより良くしていこうという動きにつながっています。事件や事故が起きれば、警察や消防の無線情報までリアルタイムで公開され、ビッグデータとして誰でもアクセスできる。そうした情報の透明性がごく自然に存在してさえいるのです。
日本では、テレビで芸能人や有名人が何を言ったかを書いた「こたつ記事(こたつに入りながらテレビを観て書ける記事)」が”全国ニュース”として日々大量に出回っています。それに比べて、地元のニュースは圧倒的に少ないままです。全国的に見ても地域メディアのニュースは、飲食店の新規オープンや閉店ばかりです。本当に地元の人は地元のニュースを求めていないのでしょうか?単に情報として発信されていないだけでしょう。芸能人や有名人の言動をいくら知っても人生が豊かになるわけではありません。私はこうした状況こそが、地域の「ニュース砂漠」だと考えています。
堺の人が堺のことを知っている
堺市民も、ニューヨーク市民と同様に街に愛着を持てるくらい、もっと堺のことを知っていていいはず。生まれ育った土地であればなおさらです。東京発信のテレビ・新聞の全国ニュースでは堺のことはほとんど報じられません。少子高齢化といっても堺市の人口動態を知っている堺の人はまれでしょう。堺の人が堺のことを知っている──。そんな当たり前の状態にしましょう。サカイタイムズは、その一助になりたいと考えています。
引き続き、サカイタイムズをどうぞよろしくお願いいたします。
2025年4月1日(日本時間)
サカイタイムズ 編集長
笹野 大輔
編集長コラム一覧
第1回 堺の人は堺のことを知らない
第2回 街を知ることから始まる、堺市のブランド力
第3回 堺のニュースは「誰のため」――ここ微妙なとこ
第4回 サカイタイムズ 半年の歩み――地元ニュースの意義
第5回 松原市が仕掛ける『堺への攻勢』 人口流出を防ぐには
第6回 ニュース検索でトップ表示、その裏にある編集
第7回 堺市役所に並ぶ、ニューヨークの1枚
第8回 公共交通は「黒字」でいいのか
第9回 ブラックフライデーは、なぜそう呼ばれるのか
第10回 地元をもっと身近に。堺市の「いま」を伝えるために
第11回 堺市の選挙割を無料掲載します
第12回 年間5,000万円の赤字バス、その構図


