私立高校無償化は誰のため?タダやったら私立に行く?
堺市議2人に聞いた制度の優先順位と鳳高校の定員割れ問題(維新・非維新 両議員の見解)
インタビュー・特集政治・行政


鳳高校、また定員割れやって
3月に発表された大阪府の高校入試の出願状況、堺でもちょっと話題になったよな。鳳高校が2年連続で定員割れしてしもたってニュース、見かけた人もおるかもしれへん。しかも鳳高校は偏差値61なのに、倍率は0.94倍。大阪全体でも、公立高校の人気が下がってきてるって声が出とるんよ。
なんでこんなことになってるんか――。よう言われとるんは、私立高校の無償化の影響。授業料がかからへんのやったら、ちょっと遠くても、設備の整った私立にしようかって考える親も子もおるやろし、それも無理ないわな。
でも、公立高校がこうやってしんどなってくるいま、ほんまにこの流れのままでええんかどうか。子どもの進路に直接関わってへん堺市民にとっても、税でまかなわれてる制度の話やから、ちゃんと考えていきたい問題やと思うんよ。今回は、堺市議の渕上猛志さん(堺区)と上野充司さん(大阪維新の会/西区)に話を聞いてきたで。それぞれ違う立場から、しっかり意見を聞かせてくれはったわ。
Q1. 高校無償化の政策について、どのようにお考えですか?
渕上猛志 議員(堺区選出)
「保護者なら当然“タダ”は嬉しいはず。ただ、公立高校の施設の老朽化等の現状を無視して、限られた財源を私立の無償化に大きく割くのは問題があります。たとえば、府立の進学校でも、何年もトイレが故障したままで、同窓会が寄付を募って修繕するような事例もあります。最低限の教育環境は、大阪府が責任を持って整えるべきで、私立無償化よりそちらが先です」
上野充司 議員(大阪維新の会/西区選出)
「この国に生まれた子どもたち全員が、経済的な理由で進学先をあきらめることがないようにしたいという思いがあります。高校進学率はすでに約99%となっており、ほぼ義務教育のような位置付けです。経済的な制約で希望する学校を選べない生徒がいる現状をふまえると、無償化は教育機会の確保に資すると考えています」
Q2. 公立高校で定員割れが進んでいる現状をどう見ていますか?
渕上議員
「堺市でも鳳高校が2年連続定員割れです。少子化の影響が大きいとはいえ、私立高校の無償化によって生徒が私立へ流れたことが、それを加速させています。令和6年度には府立高校の受験者数が前年比で2,300人以上減少し、一方、私立高校の専願受験者数は1,500人以上増加しました」
上野議員
「無償化により、実際に東京都や大阪府では公立高校の定員割れが増えています。大阪府では約70校が、東京都では都立高校の約3割が定員割れになっているという報告もあります。一部では私立の中高一貫校への進学を選ぶ家庭も増えていますが、少子化が進んでいる中で、今後は公立高校の再編も避けられない状況です」
Q3. 制度の優先順位として、どこに軸を置くべきと考えますか?
渕上議員
「公共として優先的に予算を配分すべきは、公立高校の教育環境です。先述のトイレのような事例が山ほどあり、基本的なことすら予算が追いついていません。そこに十分な予算を充当できるまでは、私立の無償化は、経済的理由で私立に進学できない低所得世帯にとどめるべきです」
上野議員
「制度としては、経済的事情を理由に生徒が本来の実力よりも低いランクの学校を選ばざるを得ないということがないようにすることが重要です。従来の支援制度では世帯年収が一定以上あると支援額が減り、中間所得層であってもかえって負担が大きくなる家庭もありました。高校までの教育費の大部分を公が支える仕組みがあれば、少子化対策にも一定の効果があると考えます」
Q4. 堺市内の公立高校の制度的な課題をどう見ていますか?
渕上議員
「大阪府では、条例により府立高校が3年連続で定員割れを起こすと、改善見込みがなければ廃校の検討対象になります。一度定員割れを起こした学校には施設更新などの予算が付きにくくなり、その学校が巻き返しを図ろうとしても、教育の質を上げるのは難しい状況になります。合格倍率を基準とした判断では、交通の便がよい地域の学校が有利となり、それ以外の地域では公立高校が廃校に追い込まれていくことになります。堺市内も然りです。地域差を考慮せずに制度が運用されていることに問題があると考えています」
上野議員
「堺市には唯一の市立高校である堺高校がありますが、こちらも定員割れが続いており、現在、学校改革の方向性が検討されています。私からも、学科構成や教員配置、改革の進捗状況の情報公開、多様な改革検討委員構成などについて教育委員会に求めています。できない理由を並べるのではなく、実行可能な改革案を積極的に進めていくべきです」
Q5. 今後、制度をどのように見直すべきとお考えですか?
渕上議員
「教育行政では“やってみてダメなら変えればいい”というわけにはいきません。一度の判断が子どもの将来に影響するからです。大阪で始まった私立高校の無償化を国に広げる前に、大阪で学力が伸びたか、私立高校無償化が少子化の改善に寄与したかなどの検証が必要です。現時点でポジティブなデータは見当たりません。広げずに、まず立ち止まるべきです」
上野議員
「無償化によって私立と公立の間に新たな競争環境が生まれています。私立高校はこれまでも中高一貫や大学連携など特色ある教育に力を入れてきましたが、公立も含めて教育の質の向上に取り組む必要があります。国公私立のいずれであっても魅力的な教育を提供できるようにしながら、生徒数に応じた最適な学校規模への再編も進めていくべきだと考えています」
まとめ(サカイタイムズ編集部より)
渕上議員は、公立高校の環境整えるんが何より先やって考えてて、無償化はほんまに困ってる家庭だけに限定するんがええんちゃうかって立場なんよ。定員割れについても、私立に流れる生徒が増えたことが原因のひとつやって見とって、制度が場所によって不利になるような運用になってることにも課題を感じてはるんやって。
一方、維新の上野議員は、子どもらが経済的な理由で進路をあきらめるようなことがないように、公的な支援は幅広く届けたほうがええって考えやねん。無償化が学校の間でいい意味の競争を生んで、教育の質も上がるきっかけになるってとらえてて、制度を活かしながら改革も進めていこかという姿勢やったわ。
制度をどう見直していくかについても、渕上議員は「一度立ち止まって検証を」、上野議員は「制度を活かしつつ前に進めることを重視」と、それぞれ考え方によう違いがあった。堺市民として、それぞれの意見を参考にして考えて行こ。
※サカイタイムズでは堺市民にわかりやすいよう堺弁で書いています。 堺弁β版について