サカイタイムズ 半年の歩み――地元ニュースの意義

―― 編集長コラム 第4回 ――

連載・コラム

6/30/2025

サカイタイムズ半年で見えてきたもの

6月30日になり、サカイタイムズを始めてちょうど半年となりました。配信した記事数は800本を超え、堺市では日刊でどこよりもニュースを配信しているメディアになりました。「堺市 事件」とインターネットで検索しても一番上に表示されるはずです。

半年間のアクセス状況

アクセス数は、6月の1カ月だけで3万7,000アクセスを超えました。これまでのアクティブユーザー(延べ人数ではなく実人数)は約3万人。1人あたり約2本の記事を読んでいる状況が続いています。

これは、1人の人が5本読むこともあれば、1本だけ読む人もいて、平均が2本という意味です。通常、なにかインターネットで調べものをすれば、そのサイトが出て役割は終わります。例えば「堺市 備蓄米」などの検索ワードです。ただ、サカイタイムズの場合は「おっ、こんなサイトもあるのか」という具合に、次に別の記事を読む人が多いということです。

「地味なニュース」ばかりの強み

サカイタイムズを読んでいる方ならお気づきかと思いますが、サカイタイムズには有名人や著名人が登場することがほぼなく、堺市に特化した地元の記事ばかりです。ぶっちゃけて言えば、地味なニュースばかりです。それでもこれだけアクセス数が上がってきているのは「地元のニュース」への需要が確かにあった証拠だと思います。むしろ、意外かもしれません有名人が関わるイベントの記事のアクセス数は伸びない傾向が続いています。

ローカルニュースの数字のカラクリ

一般的な日本のローカルニュースは、全国ニュースの配信サイトに記事を出してアクセス数を増やすのが主流です。たとえば、ある県のローカルニュースサイトがスマートニュースなどに記事を配信し、「この記事のアクセス数は数十万でした」と発信していたりします。

ただ、その記事の内容を見ると「〇〇県〇〇市に全国チェーンのラーメン店ができた」というものだったりしました。調べてみると、その〇〇市には数万人しか住んでいません。そこの全市民が読んでいるはずもなく、周辺地域を入れるとチェーン店なのでどこにでもあるので不自然なアクセス数なわけです。

「地元に読まれてこそ」ローカルニュース

何が言いたいのかというと、ローカルニュースサイトは「地元の人に読まれてなんぼ」ということです。数万人しか住んでいない地域で、全国チェーンのラーメン店の記事が数十万アクセスあっても、本質的な意味はありません。ただ、実際はインパクトのあるタイトルを付けて、他の地域の人からのアクセスが集まっているに過ぎないのです。

メディアの論理と本音

とはいえ、メディア側の立場に立てば違った見方もできます。「この記事は何十万とアクセスがありました。だからあなたのお店も、うちで記事にすれば多くの人が読んでくれて広告効果は絶大です」と言うこともできるというわけです。広告の効果がなければあなたのビジネスの問題ですよ、と。ただし、個人的には「もうええでしょう。そんなやり方は」という気持ちです。

堺市民のために――地元だけを見て配信

その点サカイタイムズは、ほとんどが堺市の人に読まれていることがデータではっきりしています。まずはそこからでしょう、という思いもあります。なぜなら堺市民はまだまだ堺市のニュースを読むことに本当に慣れていないのです。堺市のニュース?どうせ飲食店のオープンとかでしょ、という人のほうが多いに違いありません。

サカイタイムズが全国に配信されるサイトにニュースを流していないのも、最初から全国の人に堺のニュースを読んでもらおうと考えていないからです。第1回のコラムでも書きましたが、「堺の人は堺のことを知らない」という状態から、自分の街を知ってもらいたいと考えています。そこから街への誇りも生まれるのではないでしょうか。

ニューヨークの現場から――市民として参加する意味

昨日、世界最大のLGBTQ+のパレードがニューヨークで行われました。冒頭の写真はパレード脇の歩道から撮影したものです。歴史や成り立ちは以下のページにまとめています。

6月のニューヨークはレインボー(笹野大輔)
https://thetokyopost.jp/culture/3428/

今年も例年通り大規模なパレードが行われ、この日ニューヨークには約100万人が集まり、約7万5千人が道路をパレードしました。実のところ、ニューヨークで一番大きなイベントです。ですが日本では「性」に関することとして、ニュースなどでほとんど取り上げられません。裏を返せば、それだけ日本では他人の「性」というプライバシーへの関心が強いとも言えます(特に女性への)。一方、ニューヨークでは他人の「性」や個人のプライバシーは「自分には関係のないこと」とされており、あくまで個人の自由という感覚が根付いています。

ただ、ニューヨークの人にとって、このパレードは単なるイベントではなく、「自分の住む地域を誇りに思い、地域の一員として声を上げ、実際に行動する日」として広く受け入れられています。実際、私自身もLGBTQ+の当事者ではありませんが、毎年住民の一人として現場に参加することで、「地域の出来事に自分自身が関わっている」感覚を強く持つようになりました。

サカイタイムズが目指すもの――現実をそのまま伝える

サカイタイムズの記事も、堺市に暮らす人が「これは自分に関係ある」と思える、“自分ごと”として受け止められるニュースを意識して伝えています。ただ読むだけでなく、何かあれば自分から参加したり考えたりできるきっかけになればいいと考えています。情報として受け取り、能動的かつ自由に行動すればいいと思っているのです。

ときおり、堺市職員の不祥事など、アクセス数が伸びるニュースもありますが、サカイタイムズは良いことばかりを取り上げることも、反対に悪い話ばかりを強調することもしていません。美しい世界や楽しいイベントだけを見ているのでは現実を知ることはできませんし、現実には良い面もあれば課題もあります。サカイタイムズは、その両方をきちんと伝えることを大切にしています。それが現実だと考えているからです。実際ニューヨークでも堺市でも、世のなか玉石混淆でもあります。

堺市の人口がどんどん減り続けているなか、堺市の良さはどこにあるのか、反対に良くない点はどこなのか。サカイタイムズが配信する堺市のイベントを流し読みするだけでも、きっと感じることがあるはずです。参加しなくても堺市の時流がわかるサイトであれば、それだけでも意味があると考えています。

もちろん、なんとなく読んでいるうちに自分が住んでいる地域のことがわかって、これまで無関心だったけど少し参加してみようかな、という気持ちになってもらえればそれもいいことだな、とも思っています。サカイタイムズの配信を始めて半年の感想はこんなところでしょうか。サカイタイムズを引き続きよろしくお願いいたします。

2025年7月1日(日本時間)
サカイタイムズ 編集長
笹野 大輔