堺市役所本庁舎ZEB化に23億円契約 市負担13億円

光熱水費削減は15年で7億円ほど。お父さんの太陽光パネルで例えてみたで

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サカイタイムズ

9/27/2025

堺市役所本庁舎と「壮大な無駄遣い?全国の見本?」の文字|堺市のニュースならサカイタイムズ
堺市役所本庁舎と「壮大な無駄遣い?全国の見本?」の文字|堺市のニュースならサカイタイムズ

お父さんが太陽光パネルを230万円かけて買いました。国から100万円の補助が出ました。だから残り130万円は自腹です。15年かけて節約できる金額は70万円なので赤字は60万円になります。こんな構図の事業が堺市で契約されたわ。

契約締結は9月25日

堺市は令和7年9月25日、堺市役所本庁舎のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化に向け、アズビル株式会社ビルシステムカンパニー関西支社とESCO事業の契約を結んだ。契約総額は22億9,894万円で、このうち国の交付金が約9.9億円、残り約13億円を市が負担する内容になっているんやよ。

改修では、未更新の照明をLED化するほか、老朽化した空調熱源設備の更新、省エネを意識した換気や送風設備の導入、建物全体のエネルギー使用を最適化するBEMS(ビル・エネルギー・マネジメント・システム)の設置、省エネルギー制御による自動運転の導入などが予定されているんやわ。さらに光熱水費の削減を目的に、水道設備の更新や節水型機器の導入、空調に伴う冷却水の使用効率化も組み込まれているねん。

削減額は年4,773万円、保証は年4,058万円

光熱水費の削減は、予定ベースで年間約4,773万円、保証ベースで年間約4,058万円とされているんやわ。削減効果が出るのは改修工事を終えた令和10年度からの15年間。15年間の予定ベースの削減額は総額約7億1,600万円、保証ベースでは約6億800万円にとどまるんよ。この金額では堺市の負担13億円を回収することはできず、契約期間内に節約効果は出ない。結果として、市が約5.8億円を純粋に持ち出す形になるわ。

契約終了後のリスク

さらに契約が終了する令和25年3月以降は、ESCOサービス料の支払いはなくなるものの、導入した設備の日常的な運営費や維持管理費はすべて市が負担することになるやん。ほんで15年後に設備が老朽化すれば、修繕費や更新費用として再び巨額の改修契約を結ぶ可能性も出てくるわな。つまり、光熱水費削減どころか、結局いつになったら13億円の元が取れるんかどうか、ようわからん構図になっているんよ。元を取る気もないなら「光熱水費削減」を前面に出す意味もないやん。

CO₂削減は1トンあたり約3万6,000円

13億円のうち節電などで削減される分を差し引いても残る約5.8億円は、事実上CO₂削減のために支払う費用になるんよ。本庁舎での削減量は年間1,083トン、15年間で約1万6,000トン。単純計算で1トンあたりの削減コストは約3万6,000円となり、国際的な排出権取引価格(数千円規模)に比べると費用対効果は割高やわ。植樹してCO₂削減するほうが安上がりの計算にもなるで。

もちろん、ここで示した光熱水費削減やCO₂削減の数字は、堺市の負担分13億円だけを基準にした計算結果。もし国の交付金を含めた事業総額23億円で計算すれば、さらに元を取ることは難しい事業と言えるんやわ。

たとえるなら家庭の太陽光パネル

ようするに冒頭で書いたように「お父さんが自宅に太陽光パネルを230万円かけて買う」ようなもんやねん。国から100万円の補助金が出ても、残り130万円は自腹。電気代は安くなるけど、その効果は年間4万7,000円ほど。15年で約71万円しか節約できず、最初に払った130万円は取り戻せへん。結果として約59万円の赤字が残る計算になるんよ。

しかも家庭用でも、年月が経てばパネルや機器に維持費や修繕費がかかるのは避けられへん。それでもお父さんは「節約にはならんけど二酸化炭素は減らせる。うちがモデルになれば近所の人もやるかもしれへんやん」と説明――。今回の堺市役所本庁舎ZEB化事業も、まさにこの構図なんやわ。

わかりやすい数字一覧

・契約総額:22億9,894万円
・国の交付金:約9億9,000万円
・堺市の負担:約13億円
・光熱水費削減予定額:年間約4,773万円(15年で約7億1,600万円)
・光熱水費削減保証額:年間約4,058万円(15年で約6億800万円)
・契約期間中の純持ち出し:約5.8億円
・CO₂削減量:年間1,083トン(15年で約1万6,000トン)
・CO₂削減コスト:1トンあたり約3万6,000円

市が掲げる事業の意義

堺市は、この事業を単なる光熱費削減ではなく「モデル事業」として位置づけているわ。提案募集要項や特記仕様書には、「本庁舎のZEB化をモデル事業として全国に発信する」「民間や他の公共施設への波及効果を期待する」と明記されていて、先進事例としての役割を強調しているねん。また、国から選ばれた脱炭素先行地域の事業として交付金を活用し、地域全体に省エネの波及効果を広げたい意向も示されているわ。

なお、今回の改修で本庁舎は「ZEB Oriented」の認証を取得する予定。この認証は国の交付金を受けるための前提条件とされており、認証を得たからといって直接的に節約につながるわけではないねん。

無駄か見本か

国の交付金で9.9億円が入る一方、堺市の負担は約13億円。毎年光熱水費が削減されると説明されているけれど、運用などにかかる総額は約23億円で、市が支払う約13億円のうち節約できるのは約7億1,600万円。残る約5.8億円は脱炭素のための費用になる堺市のESCO事業。壮大な無駄遣いか、それとも先進事例として全国の見本と受け止めるかは、堺市民の判断に委ねられることになるわ。

詳しくはこちら:
【契約締結】本庁舎のZEB化に向けたESCO事業【堺エネルギー地産地消プロジェクト】

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