ブラックフライデーは、なぜそう呼ばれるのか
―― 編集長コラム 第9回 ――
連載・コラム


ペルーの高地と体調不良
南米ペルーに行ってきました。最近サカイタイムズが不定期更新になっていましたが、ニューヨークに戻ってからは1週間で5kg体重を減らすほど体調を崩していたのです。更新されていない日は「どうしたんだ?」といわんばかりにアクセス数が伸びていました。毎日読んでいるかたが増えていることに気づかされます。
ペルーでは、クスコという古都にも行きました。街全体の標高は富士山と同じくらいで坂道や階段も多い地域でした。高地なので、階段を2階分上がると4階分、3階分だと6階分の体力を消耗するようなところです。堺市などもそうですが、歴史ある地域の道は、土地を造成する前から道があるため、地形に合わせて自然と形づくられています。クスコのような山間部では、そこに大きな高低差が加わり、想像以上に体力が削られました。
高山病と経験という過信
それに加えて、高山病との戦いもありました。25年ほど前にネパールから5000m級のヒマラヤ山脈をSUVで越え、チベットにも行ったことがあるため、今回のペルーは正直なところ甘く見ていました。「まあ、大丈夫だろう」と。
しかしチベットとの決定的な違いは、ペルーの首都リマからクスコまで、国内便で約1時間という移動です。一気に富士山級の標高まで上がったことで、体が順応しきれなかったのでしょう。また、気が緩んだせいもあり、ニューヨークに戻ってからのほうが体調を崩したのです。
「老後にしよう」は成立しない
ようやくここ数日で「まとも」と言える体調に戻りました。年齢による体力の衰えを感じる歳になった、ということでしょうか。ただ、これだけははっきり言えます。「老後にしよう」は、「老後にできない」という事実と表裏一体です。人生の一回性や終活を意識するのであれば、できることは先送りせず、すぐにやるほうが現実的だと思います。


ブラックフライデーとは
さて、サカイタイムズの編集にあたり、先月末は日本語で「ブラックフライデーセール」という言葉を頻繁に目にしました。しかし、おそらく日本人のほとんどは、その意味を深く知らないまま使っているのでしょう。ブラックフライデーの発祥はアメリカです。しかもニューヨークと同じく、アメリカ東部の文化と密接に結びついています。
歴史を細かくさかのぼるのではなく、今回は現代アメリカ人の生活習慣から整理しておきたいと思います。ざっくり知っておくだけでも、毎年やってくる「わけのわからん言葉」にならずに済むはずだと思うからです。
アメリカの家族行事と商習慣
アメリカではクリスマスに家族が集まります。ここで言う「家族」には親戚も含まれ、日本で言えば、かつての正月のような親戚一同の集まりです。日本ではそうした場で「お年玉」をやり取りしますが、アメリカではそれが「クリスマスプレゼント」に当たります。つまり、親戚や子どもへの贈り物を準備する必要があります。
日本の新聞では、これらの背景を抜きに「アメリカのクリスマス商戦」と書いてアメリカの経済を占う指標のように書いています。しかしその背景にはアメリカの文化がしっかりとあることを知っておいてもいいでしょう。アメリカ人にとってクリスマスプレゼントを買い始める合図となるのが、サンクスギビング(感謝祭)という日なのです。
サンクスギビングからブラックフライデーへ
サンクスギビングは、毎年11月の第4木曜日と決まっています。今年は11月27日でした。この日アメリカでは「家族」が集まり、七面鳥を食べる慣習があります。そしてサンクスギビングの日になると、「もうすぐクリスマスだな。そろそろみんなへのプレゼントを買わないと」と意識が切り替わります。
その翌日の「金曜日」に一斉に買い物が始まります。だからアメリカの各社は、この日に合わせてセールを実施するようになりました。これがブラックフライデーです。
ブラックフライデーの語源
ブラックフライデーには諸説ありますが、有力なのは、各社が黒字になることから「ブラック(黒字)・フライデー(金曜日)」と呼ばれるようになった、という説明です。セールをするなら赤字大放出で「赤字」になってもおかしくはないですが、ブラックフライデーの本来の意味は売り手が黒字になるからと覚えて問題ありません。アメリカでは誰も気にしていないことでもあります。
サンクスギビング(感謝祭)の起源まで掘り下げると長くなりますが、ヨーロッパから移民したアメリカ人が原住民に感謝のために食事を振る舞った、それが七面鳥料理だった、という点まで押さえておけば十分です。…そうじゃないと話長なるやん。ちなみにサカイタイムズの記事でも必要あれば説明は入れつつも、なるべく短くなるよう心がけてます。
ブラックフライデーまでの流れ(整理)
・11月第4木曜日、サンクスギビング(感謝祭)
→ 家族・親戚が集まり七面鳥を食べる
→ クリスマスが近いことを意識する
→ 親戚や子どもへのプレゼント準備が必要になる
→ 翌日の金曜日に買い物が集中
→ 各社が一斉にセールを開始
→ 帳簿が黒字になりやすい
→ 「ブラック(黒字)・フライデー(金曜日)」と呼ばれるようになった
とりあえずは、ブラックフライデーの背景を知ることはできたのではないでしょうか。今後の日本で毎年出てくるであろうブラックフライデーセールなる言葉は、アメリカのクリスマスの慣習が関係していることを知って、もやもやを解消してくださいな。
2025年12月6日
サカイタイムズ 編集長
笹野 大輔
画像上:クスコの塩田の帰り道でドローンで道中を撮影 / 画像下:ペルーのマチュピチュ遺跡を背景にサカイタイムズ笹野 大輔編集長


