「正しいことより楽しいことから」
小学校教員を経て、堺市立百舌鳥支援学校で定年まで教員を務めた五島丸太さん。退職後は「まるたせんせ」として、ギターを使った歌遊びやマジック、ゲームなど、参加型の「お楽しみショー」を続けている。現職時代から大切にしてきたのは「正しいことより楽しいことから」。支援学校での経験が今の活動にどうつながっているのか、これまでとこれからを聞いた。
氏名:五島丸太さん(まるたせんせ)
年代:70代
居住区:堺市北区
主な経歴:小学校教員、堺市立百舌鳥支援学校教員
現在の主な活動:「お楽しみおじさん まるたせんせ」、大阪常磐会大学の公開講座などの講師、不登校児童生徒の居場所「ゆったりカフェ」スタッフ
Q1
これまで、どんな仕事をしてきましたか?
小学校の通常学級と支援学級の担任、市立支援学校の教員をしてきました。1987年、31歳の時に堺市立百舌鳥支援学校へ転勤し、定年まで勤めました。
定年退職後は、大阪常磐会大学の公開講座などで講師を務めるほか、堺市の生涯学習講座「堺 自由の泉大学」で、初級の「手品講座」、2年目以降の「手品フラワー講座」を担当しています。不登校児童生徒の居場所「ゆったりカフェ」のスタッフとしても活動しています。
そして、定年退職後の主な「仕事」は、「まるたせんせ」として、ギターを弾いての誰でも楽しめる歌遊びや簡単ダンス、マジック、ゲーム、オリジナル紙芝居、こばなし、腹話術、お笑い替え歌、怪談、そしてジャグリング教室……。どれも参加型の「お楽しみショー」を1人で1時間〜2時間ほど演じることです。
ほかにも、バルーンアートやパントマイムなどのワークショップを行ったり、イベントに招かれて似顔絵を描いたりすることもあります。
Q2
いまの生活の中で「自分らしい日常だ」と感じる場面とは?
障がいがあるなしにかかわらず、幼児から高齢者までのたくさんの人たちに、次はどんなことをして喜んでもらおうかと考えている時です。
現職の頃から最も大切にしてきた実践のコンセプトは、「正しいことより楽しいことから」です。それを常に考えることができる今の生活に感謝です。
Q3
堺で暮らしてきた中で「ここで生きてきた実感がある」と感じる場面とは?
堺での仕事に関わったたくさんの人たちから教わり、身につけてきたパフォーマンスを、堺の人たちの前で演じてウケた時です。
金岡南小校区の子どもたちへのイベントなど、堺市内の各校区にもけっこう招いていただいています。高齢者の方々が参加する地域イベントにも呼んでいただいています。
Q4
人生の中で「大きな転機だった」と感じている出来事とは?
支援学校への転勤です。1987年、31歳の時に堺市立百舌鳥支援学校へ転勤しました。当時の校長から誘われて、「よし!若いうちに修行をしよう」と決意したのです。ただ実際は「若くない」定年まで支援学校で過ごしました。
支援学校ではとくに、話すだけ、見せるだけ、動かすだけでは授業にはならず、どうすれば興味を持って主体的に学習に取り組んで成長発達を促すことができるのか、毎日がチャレンジの連続でした。
例えば、数や数字、類別(仲間分け)の学習では、大きなサイコロを振って1から6までのカードをそろえる「サイコロビンゴゲーム」を作りました。
もう一つが「いいところカルタ」です。一人ずつ前に出て、ほかの子がその子の「だれにもやさしい」「走るのがはやい」などの「いいところ」を発表します。その中から本人が好きな「いいところ」を選び、カードに文を書き、別のカードにはその文に合う絵を描きます。でき上がったら、みんなでカルタ取りをして遊び、最後に取った枚数を数えます。
こうした集団で楽しく学習できるゲームをたくさん開発し、校内研修だけでなく、堺市の教員向け研修などでも紹介してきました。そのための新たな教材教具、指導方法を開拓してきたことが今に活きています。
ゆったりカフェ
五島さんがスタッフとして関わる「ゆったりカフェ」は、学校に行かない、行けない子どもたちが、学校の代わりに「通う」のではなく、ふらっと立ち寄って自分のペースで過ごせる居場所として始まった。堺市内で月2回開催されている。
Q5
「ゆったりカフェ」で、子どもたちから気づかされたことはありますか?
ある戸外イベントで「芋ほり」をしました。スタッフの企画会議で、イモの大きさ比べや長さ比べをしたら楽しいだろうと、定規やメジャー、計量器を用意しようとなりました。
その計画を事前に「ゆったりカフェ」で子どもたちに知らせたら、「そんなのはしたくない!」と……。
人と比べて競争したら楽しいだろうとの考えは、大人の勝手な先入観でした。目からウロコのできごとでした。教育の本当のあり方を考えさせる一つのエピソードです。
Q6
これからの人生について、現時点で考えていること。
「まるたせんせ」として人に楽しんでもらえるパフォーマンスを演じるとともに、これからはいろいろな職場や団体に「まるたせんせ」を増やしたいと思っています。
そのために、大学の学生さんをはじめ、招いてもらった施設や団体の職員さんにいっぱいマネていただきたいと考えています。
取材・文:笹野 大輔
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