堺市長選「同日選」報道を検証 市選管の意向決定は3か月前だった

報道が集中した理由は不明 前回1対3、今回は委員4人全員が同日実施を支持

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堺市役所の外観

8月26日に新たな決定があったわけではない

2026年8月26日、来年6月に任期満了を迎える堺市長選について、「来春の統一地方選に合わせて前倒し」「大阪府知事選、大阪市長選と同日実施へ」といった報道が相次いだ。

ただ、堺市選挙管理委員会が8月26日に新たな判断をしたわけではない。

市選管が総務省に対し、「2027年の統一地方選として実施する意向がある」と回答する方針を決めたのは、約3か月前の5月20日。堺市選挙管理委員会の会議録に、その経緯と4人の委員の意見が記録されている。会議は公開が原則で、会議録も市ホームページで公開されている。

一方で、堺市長選の投票日そのものは、まだ正式に決定されたとは公表されていない。何が決まり、何がまだ決まっていないのか。公開資料と8月26日の報道を切り分けて整理する。

5月20日に「統一地方選で実施する意向あり」

5月20日に開かれた「令和8年第5回選挙管理委員会」では、「統一地方選挙に関する総務省調査」が議題となった。

総務省は4月28日付で、2027年の統一地方選に向けた特例法案を検討するため、同年6月1~10日に任期満了を迎える自治体の長について、統一地方選として実施する意向があるかを調査していた。回答期限は5月27日。堺市長の任期満了日は2027年6月8日のため、この対象に入る。

会議には大毛十一郎委員長、裏山正利委員長代理、池西隆昭委員、西惠司委員の4人が出席。それぞれが同日実施を支持する意見を述べた。

裏山委員長代理は、前回の市長選後に実施した市民アンケートで同日実施を支持する回答が過半数だったことを重視。西委員も、投票日を統一してほしいという市民の意向を踏まえるべきだとした。

池西委員は、前回の2023年6月の市長選の投票率が34.12%だったことを挙げ、統一地方選と同日なら、より多くの有権者の意思が投票に反映されるとの考えを示した。

大毛委員長も同日実施が市民の要望と整合すると判断し、4人の意見が一致したことを確認した。

最終的に、市選管は総務省への回答を「意向がある」とする文案を異議なく了承した。

回答理由には、前回市長選の投票率が統一地方選より13.86ポイント低かったことや、複数の選挙を同日に行うことで有権者の投票行動を一度に集約し、政治参加の機会を確保できることが挙げられている。

つまり、5月20日に決まったのは、あくまで「統一地方選として実施する意向があると国へ回答する」ことだった。

正式な選挙日程はまだ決まっていない

ここで重要なのが、「実施する意向」と「選挙日の正式決定」は別だという点だ。

5月20日の会議で総務省からの調査について説明した事務局も、この調査を「選挙期日等の特例を定める法律案を検討するにあたり、各自治体の意向を事前に確認するもの」と説明している。

堺市の「選挙の予定」ページでも、8月28日現在、市長選の次回執行予定は「令和9年6月頃」のまま。現職市長の任期満了日は2027年6月8日と記載されている。このページ自体の更新日は2026年2月12日となっている。

現在までの流れを整理すると、

  • 4月28日:総務省が2027年統一地方選に関する意向調査
  • 5月20日:堺市選管が「実施する意向あり」と回答する方針を決定
  • 5月27日:総務省への回答期限
  • 今後:国の特例法の内容を踏まえ、市選管が正式な選挙期日を判断
  • 2027年4月:統一地方選と同日実施となる可能性

という段階にある。

だからまだ「来年4月の市長選が正式決定した」という状況ではない。

堺市長選が6月になった理由

堺市長選は以前から6月に行われていたわけではない。

2017年までは9月に実施されていたが、竹山修身前市長が2019年4月30日に辞職し、同年6月9日に市長選が行われたことで、その後の任期満了が6月上旬となった。

このため堺市は、6月1~10日に任期満了を迎える自治体を対象とした統一地方選の特例について、前回2023年に続いて今回も国から意向を尋ねられている。

なぜ8月26日に報道が集中したのか

では、5月20日に公開の委員会で決まっていた方針が、なぜ約3か月後の8月26日に相次いで報じられたのか。堺市の公開資料からは直接の理由を確認することはできない。

確認できた報道では、MBSが8月26日午前11時6分、共同通信が同日、朝日新聞が午後4時45分に記事を掲載している。

ただ、いずれも「8月26日に市選管が新たに決定した」とする内容ではなく、あくまでも「意向を示した」にすぎない。

一方、市選管の5月20日の会議録は市ホームページに掲載され、今回の「意向あり」という判断も確認できる状態にある。堺市選挙管理委員会の規程では、会議は原則公開とされている。

そのため、公開資料から確認できるのは、

  • 市選管が意向を決めたのは5月20日
  • 8月26日に新たな行政判断が行われたわけではない
  • なぜ8月26日に報道各社が相次いで記事化したのかは確認できない

というところまでだ。

誤解があってはならないので書いておくと、「市が3か月間隠していた」とする根拠はなにもない。(目立つ場所ではないが)会議録として公開されていた。もちろん、非公開だった情報が明らかになったわけではない。

なお、堺市ホームページで市長選の次回執行予定が現在も「令和9年6月頃」となっているのも誤りではない。特例法がまだ成立しておらず、選挙期日も正式に決まっていないため、現行制度上の予定としては6月のままで「正しい」といえる。

つまり、日本の報道でよく見る「明らかになった」という表現は、必ずしも「その日に初めて公表された」という意味ではない。

今回の場合、5月20日の時点ですでに公開されていた事実を、おそらく報道機関が8月26日に取材・確認し、「明らかになった」と記事にしたものだ。少なくとも、堺市側が8月26日に初めて公表したわけではない。

前回は1対3で単独選挙を選択

同日実施をめぐる議論は前回にも行われた。2023年市長選でも、統一地方選と同じ4月9日に行うか、任期満了に近い6月4日に市長選を単独で行うかが議論された。

当時の2022年12月10日の市選管で、4人の委員が挙手で採決。

2023年4月9日の同日実施を支持したのは松井利治委員の1人。6月4日の単独実施を支持したのは星原卓次委員長代理、山口博委員、中井國芳委員長の3人で、1対3で6月4日に決まった。

同日実施を支持した松井委員は、投票率向上と選挙経費の削減をメリットに挙げていた。

一方、単独実施を支持する側からは、市長候補の主張や争点が分かりやすくなること、選挙事務の安全性、当選から就任まで約2か月空くことなどが論点として挙げられた。

当時の検討では、同日実施による選挙執行経費の削減額は約1億1000万円と試算されていた。

単独実施後、市民の57.4%が「同日に」

実際に2023年6月4日に行われた市長選の投票率は34.12%。同年4月9日に行われた統一地方選の堺市議選は47.98%で、市長選は13.86ポイント低かった。

その後、市選管は市内の有権者3000人を無作為抽出してアンケートを実施。1095人から有効回答があり、市長選の日程については、

  • 統一地方選と同日に実施するべきだった:57.4%
  • 単独の選挙でよかった:22.9%
  • わからない:18.7%

という結果になった。

※この3項目の合計は99.0%。残る1.0%については、5月20日の会議録本文では内訳を確認できない。

委員4人も前回から全員交代

市選管の委員は2025年3月に改選され、現在の大毛十一郎委員長、裏山正利委員長代理、池西隆昭委員、西惠司委員の任期はいずれも2025年3月4日から2029年3月3日まで。前回2022年の判断を行った4人から全員が入れ替わっている。

今回の委員会では、前回単独実施した市長選の投票率と、その後の市民アンケートを踏まえ、4人全員が同日実施の意向を支持した。

ただし、前回と今回では判断している段階そのものが違う。

前回2022年12月は、すでに成立していた特例法を踏まえて、実際の市長選を「4月9日」か「6月4日」か選ぶ正式な期日決定だった。

今回は、国が2027年の特例法案を検討するために行った調査へ、「同日実施を希望する」と回答した段階にとどまる。

「前回は1対3、今回は全会一致」という変化は事実だが、今回の全会一致をそのまま「選挙日の正式決定」と捉えることはできない。

同日実施となれば、堺市の有権者は大阪府知事選、大阪府議選、堺市長選、堺市議選の4種類の投票を同じ日に行うことになる。(笹野 大輔)

現在の堺市選挙管理委員の構成

・委員長:大毛 十一郎(堺区、無所属)

元堺市議5期。民主党所属、市議会議長・副議長を歴任。

・委員長代理:裏山 正利(堺区、公明党)

元堺市議・堺区選出。公明党堺市議団幹事長などを務めた。

・委員:池西 隆昭(南区、日本維新の会)
・委員:西 惠司(中区、自由民主党)

参照した公開資料

・堺市選挙管理委員会「令和8年第5回選挙管理委員会会議録(要旨)」
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo_i/sakai_senkyo_iinnkai.files/r805.pdf

・堺市選挙管理委員会「令和4年第14回選挙管理委員会会議録(要旨)」
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo_i/sakai_senkyo_iinnkai.files/R414.pdf

・堺市「選挙の予定」
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo_s/schedule.html

・堺市「堺市選挙管理委員会」
https://www.city.sakai.lg.jp/shisei/senkyo/senkyo_i/sakai_senkyo_iinnkai.html

・堺市「令和5年堺市長選挙等に関するアンケート調査結果」
https://www.city.sakai.lg.jp/sakai/torikumi/chiiki/teireikai/78036220240621152110579.files/senkan2.pdf

・MBSニュース「堺市長選も大阪府知事選・大阪市長選と同日実施へ 来春の統一地方選」
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2896857

・共同通信「堺市長選、来春統一選で 大阪府市首長と同日実施へ」
https://www.excite.co.jp/news/article/Kyodo_1465182010946372598/

・朝日新聞「堺市長選を前倒し実施へ 統一選で知事、大阪市長との同日選見通し」
https://smart.asahi.com/v/article/ASV8V1V5FV8VOXIE005M.php

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