朝ご飯はチョコから。チョコレートで堺との接点を広げる平田朋佳さん

ガーナのカカオ農園視察を経て間借り営業から実店舗へ。地元とのつながりを少しずつ形に

インタビュー・特集

サカイタイムズ

4/18/2026

HIPPO to MOCA(ヒッポトモカ)店内で立つ平田朋佳さん|堺市のニュースならサカイタイムズ
HIPPO to MOCA(ヒッポトモカ)店内で立つ平田朋佳さん|堺市のニュースならサカイタイムズ

今週の堺人(サカイビト)Vol.9

ガーナ視察を経て、堺で開店

平田朋佳さんは、小さい頃からチョコレートが好きで、独学で学びながら発信を続けてきた。24歳のときにガーナのカカオ農園を視察したことをきっかけに、チョコレートだけでなく地元・堺にも目が向くようになり、自分の好きなもので街を盛り上げたいと考えるようになった。2024年7月7日の国際チョコレートデーに「HIPPO to MOCA」を開業し、約1年間の間借り営業を経て、2025年11月に実店舗をオープン。チョコレートと米粉シフォンケーキを通して、堺の食材や人とのつながりを広げようとしている。

画像:HIPPO to MOCA(ヒッポトモカ)店内で立つ平田朋佳さん

プロフィール
氏名:平田 朋佳
年代:26歳
職業:HIPPO to MOCA(ヒッポトモカ)オーナー
居住地:堺市
堺市居住歴:18年

編集部注:店名のHIPPO(ヒッポ)は英語でカバ、to MOCA(トモカ)は名前の朋佳から。

Q1

これまで、どんな仕事をしてきましたか?

小さい頃からチョコレートが好きで、「チョコレートを一生食べ続けたい」という思いから、チョコレートについては独学で学び始め、20歳の頃からは「チョコガール」という名前でSNSを通して発信も続けています。

大学では栄養学を学んでいました。管理栄養士、フードスペシャリスト資格を取得しています。大学卒業後はチョコレート店に就職し、働きながら社会人向けの製菓学校に通い、起業準備のために退職しました。その後、カカオ生産国であるガーナを訪問し、チョコレートへの思いはさらに強くなりました。

帰国後、チョコレートだけでなく地元・堺市について改めて考えるようになり、自分の好きなもので地元を盛り上げたいという思いから、2024年7月7日の国際チョコレートデーに「HIPPO to MOCA」を開業しました。約1年間の間借り営業を経て、2025年11月に実店舗をオープンしました。

Q2

いまの生活の中で「自分らしい日常だ」と感じる場面とは?

チョコレート好きの私の一日は、朝ごはんにチョコレートを食べるところから始まります。365日食べ続けても全く苦にならず、むしろ食べるチョコレートの量は年々増えています。そんな毎日が、自分らしい日常だと感じています。

チョコレートをより楽しむために、食事の際に食材との組み合わせを試すこともあります。たとえば、とんかつにチョコレートをかけてみたり、野菜と一緒に食べてみたりと、たまに思いついたときに実験のように楽しんでいます。日常の中でも「この食材とチョコレートを合わせたらどうなるだろう」と考えることが多く、そうした発想が商品づくりのヒントにつながることもあります。

定休日には店舗周辺のお菓子屋さんやごはん屋さんを訪ねることが多く、そこで生まれる新しいつながりや堺の開拓も楽しみの一つです。お店を始めてから、大阪市内に遊びに行くことがあっても「堺の経済を回したい」という思いから、自然と堺へ戻ってきて食事をすることが増えました。

Q3

堺で暮らしてきた中で「ここで生きてきた実感がある」と感じる場面とは?

18年ほど堺に住んでいますが、そのうち4歳から12歳までは海外で生活していたこともあり、中高、大学や就職先も堺ではなかったため、地元との関わりはほとんどありませんでした。堺といえば!な古墳を見に行ったのも2年前が初めてで、正直「堺」にあまり関心がなかったように思います。

しかし最近では、「堺愛が強いですね」と言っていただくことも増えました。とはいえ、最初からそうだったわけではありません。テナント募集の看板や閉店するお店が増えていく様子、空地は駐車場かマンションばかりになっていく、そんな地元の変化を目にする中で、「このままでいいのかな」と、少し不安のような気持ちを抱くようになりました。堺愛というよりも、どこか危機感に近い感覚だったのかもしれません。

歩くことで見えてきた堺
地元が変わっていくことは悪いことばかりではないと思いつつも、変わっていく姿を見ているだけでいいのだろうか、と感じるようになり、市場調査も兼ねて、環濠エリアを中心に歩くようになりました。最初はただ歩くだけでしたが、少しずつお店や街の様子に目が向くようになり、「こんな場所があったんだ」と、新しい発見も増えていきました。

お店を始めてからは、店舗周辺を歩く機会がさらに増え、定休日には近くのお菓子屋さんやごはん屋さんを訪ねるようになりました。たくさんの人と出会う中で、堺の人は、全員が知り合いなのでは、と思うくらい、必ず一人は共通の知り合いがいる。そんな面白さにも触れる中で、私自身も「つながりを求める人」から「つながりを広げる人」へ、少しずつレベルアップしているように感じています。

まだまだ知られていない存在ではありますが、ここで生きているという実感が、以前よりも確かなものになってきていると感じています。

Q4

人生の中で「大きな転機だった」と感じている出来事とは?

人生の中で大きな転機だったと感じているのは、2年前、24歳のときです。

起業したいという思いは学生時代からありましたが、いざ現実的に考え始めると、特に金銭面の不安が大きく、なかなか一歩を踏み出せずにいました。学生時代から目標のためにお金は貯めていたものの、きちんと計算してみるとまだまだ足りず、お金を借りるということも自分にとっては大きなハードルでした。

社会人に戻るべきか、それともチョコレートは趣味や副業のままにするべきか。やりたい気持ちはあるのに、リスクから逃げることばかり考えていた時期でもありました。頭の中では、「24歳で事業を始め、25歳で店舗を持つ」という理想を描いていたものの、タイムリミットが近づくにつれ、現実との距離を感じていました。

起業準備のためチョコレート店を退職した後も、以前から通い続けていた社会人向けの製菓学校に通いながら、堺市の起業家輩出プログラムにも参加し、アルバイトをしていました。

チョコレート店を持つ覚悟
アルバイトを始めて数か月ほど経った頃、チョコレート店を開きたいという思いを日頃から話していたこともあり、アルバイト先のシェフから「一度うちで試してみたら?」と、姉妹店での間借り営業を提案していただきました。

とてもありがたいお話でしたが、「もしここで失敗したらチョコレートの道には進めなくなる」と考えてしまい、覚悟が足りず、お断りしてしまいました。当時の私は、それほどまでに一歩踏み出すことが怖かったのだと思います。

そんな中、「時間があるのは今だけかもしれない」と思い、24歳になってすぐ、以前から関心のあったカカオ生産国・ガーナを訪れることを決めました。チョコレート店を始めるなら、本物のカカオ農園をこの目で見ておきたい、現地をきちんと視察したいという思いが、ずっと心の中にあったからです。

運よく、国際協力機構(JICA)主催のカカオスタディーツアーに参加する機会をいただき、初めての海外一人旅にも挑戦しました。現地ではカカオ農園の視察や栽培から出荷までのプロセスを学ぶだけでなく、ツアーのサポートをしてくださっていた、児童労働の問題に取り組むNPO法人のACEさんが支援するコミュニティや学校も視察しました。

海外で見つめ直した覚悟
一番影響を受けたのは、ツアーに一緒に参加された方々や現地の方々でした。現地の方々の、前向きで、今ある環境の中で楽しんでいる姿勢や、自分の暮らす地域に誇りを持っている様子。ツアー参加者の方々が私の目標に対して励ましの言葉をかけてくださったことも大きく、「やってみたい」という気持ちを後押ししていただいたように思います。

視察の日々の中で、「ガーナの支援ももちろん大切だけれど、そもそも自分の国はどうなんだろう。もっと身近な大阪、住んでいる堺にも課題はたくさんあるのではないか」と考えるようになり、初めて地元に目を向けるようになりました。

短い滞在ではありましたが、現地で過ごす中で、物事をある程度「まあいっか」と受け止められるようになり、自分でも驚くほど前向きな気持ちで帰国しました。帰国後、何度も断ってしまった間借り営業の話でしたが、「やってみたいです」と伝え、大きな一歩を踏み出しました。間借り営業を1年経て、実店舗HIPPO to MOCA(ヒッポトモカ)の開店へと繋がりました。

2024年3月ガーナのカカオ農園(左)と、2025年8月インドネシアのカカオ農園(右)を視察した際の平田朋佳さん|堺市のニュースならサカイタイムズ
2024年3月ガーナのカカオ農園(左)と、2025年8月インドネシアのカカオ農園(右)を視察した際の平田朋佳さん|堺市のニュースならサカイタイムズ

画像:2024年3月ガーナのカカオ農園(左)と、2025年8月インドネシアのカカオ農園(右)を視察した際の平田朋佳さん

Q5

これからの人生について、現時点で考えていること。

私にとってチョコレートは、コミュニケーションツールのような存在です。自分の好きなものを伝えることで、誰かがそれを好きになってくれたり、その「好き」が広がっていく。そして、それを地元・堺で実現できていることが、本当に嬉しいです。

一方で、チョコレート専門店のチョコレートは、まだ日常的に選ばれる存在ではないという課題も感じています。堺にはチョコレート専門店自体が多くなく、バレンタインのような特別な時期を除くと、「チョコレートを食べたいから専門店に行く」という習慣は、まだあまり根付いていないように思います。

実際にお店に来てくださる方の中にも、「どう選べばいいのか分からない」と話す方がいます。第一歩として、今年のバレンタイン時期にはチョコレートセミナーも開きました。コンビニやスーパーのように気軽に手に取れる存在とは違うからこそ、専門店のチョコレートの魅力を、まずは知ってもらうことが必要だと感じています。

また、HIPPO to MOCAはチョコレートだけでなく、米粉のシフォンケーキも主力商品です。アレルギー対応の観点から小麦粉を使わず、焼き菓子にも米粉を使っています。現在は、堺の食材やチョコレートとの組み合わせを生かした味を週替わりで展開しており、米粉シフォンケーキを目当てに来てくださる方もいます。チョコレートが苦手な方にも来ていただくことが増えていて、自分では「チョコレート専門店」という枠には属さない店だと感じています。

チョコレートと米粉シフォンケーキの店、HIPPO to MOCAを通して、堺の食材や人とのつながりを広げていく。そんな役割を持った場所になっていきたいと考えています。いずれは、堺にあって当たり前の場所、なくてはならない存在になりたいです。

もっと知りたい堺
そして、現在も商品の一部には堺にゆかりのある食材を使用していますが、今後はもっと地域との関わりを深めていきたいと考えています。チョコレート自体を堺で完結させることは難しい部分もあるかもしれませんが、それ以外の素材や商品づくりの中で、できる限り堺と結びつけていきたいです。

「ものの始まりはなんでも堺」と言われるように、堺にはまだまだ可能性があると感じているからです。緑があり、川があり、程よく都市でありながら人情もある、とても魅力の多い街だと思います。

ただ、その魅力をすべて理解できているわけではなく、今はまだ“好きになっている途中”という感覚でしょうか。だからこそ、これからお店を通してもっと堺を知り、もっと好きになっていきたいと思っています。将来的には、堺の観光大使のような存在になれるくらいまで、この街との関わりを深めていけたらと考えています。お店を通して地域の方々とのつながりを広げながら、堺の中でできることを少しずつ増やし、地域に根ざしたお店づくりを続けていきたいです。

記事:笹野 大輔

その人の言葉は、その人の時間そのもの。サカイタイムズは、堺で生きる人の記録をこれからも残していく。

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