子どもの育ちを校区でつなぐ あすか保育園と少林寺小学校の幼保小連携

園と小学校が互いの現場を知り、入学前後の段差を小さくする取組やわ

インタビュー・特集
サカイタイムズ
小学校のプールサイドで、園児たちが水泳授業の様子を見学している
少林寺小学校のプール参観で、水泳授業の様子を見学するあすか保育園の園児たち

園と小学校の歩み寄り

小学校と保育園の間で、連携が広がっている。堺市の幼保小接続支援事業は、5歳児から小学校1年生までの「架け橋期」を対象に、園と小学校の段差を小さくする取組だ。かつては、保育園での取組について「保育園が先に教えすぎると、小学校入学後に子どもが生意気な態度をとる」といった受け止めが、小学校関係者から聞かれることもあった。

しかし今は、子どもが小学校に一方的に合わせるのではなく、小学校側も園での育ちを知ろうとする流れに変わっている。

この取組の一環として、幼保連携型認定こども園あすか保育園と堺市立少林寺小学校では、園児と児童が交流。また、職員同士が互いの現場を知り、子どもの育ちを引き継ぐ関係づくりが進められている。

あすか保育園の柏木愛園長によると、同園の卒園児の約50%は英彰校区へ進学し、少林寺校区と熊野校区がそれぞれ約10%を占める。そのほか、市校区、安井校区、湊校区、浜寺校区、大仙校区、神石校区などにも進学しているという。

小学校の話題が出るように

小学校の先生が園庭で園児たちの活動を見守り、遊具のそばで関わっている様子
少林寺小学校の先生方による保育参観の様子。園児の遊びや活動を通して、園での育ちを知る機会になっている

少林寺小学校との連携で、あすか保育園の職員がまず挙げたのは、子どもたちの変化だった。小学校は、園児にとって「知らない場所」から、知っている先生や小学生がいる場所へ変わっていく。以下は、あすか保育園職員による感想。

  • 子どもたちから小学校の話題(活動の楽しかった思い出話や、小学校の先生や関わった小学生の話)が出てくるようになり、子どもたちが小学校との連携活動を楽しみにしていることを感じます。園では一番年上の子どもたちが、小学生のおにいちゃんやおねえちゃんにいろいろ教わっている姿を見るのがとても新鮮で良いです。
  • 小学校の様子をより深く知ることだけでなく、小学校の先生方と直接話をすることで、一人一人の子ども達の姿や育ちについて丁寧に情報共有ができたこと、また小学校とのつながりが深まり、身近な存在として感じられるようになったことです。
  • 子どもの育ちや配慮児を引き継ぐことで継続した支援ができることです。

※「配慮児」は支援や配慮を必要とする子ども

小学校が園の保育を見る意味

また、小学校の先生が園の保育を見に来ることについて、あすか保育園の職員は、0歳から就学前までの育ちを知ってもらえる意味を挙げる。

あすか保育園職員

  • 0歳から就学前の子どもたちの生活や活動の姿を見て、知ってもらえる事に意味を感じています。
  • 普段の子ども達の姿を見てもらうことで一人ひとりの子どもの育ちや特性への理解を深めてもらえると感じます。
  • 保育の進め方や子どもへの配慮をどのように行っているのかを知ってもらい、小学校への支援やサポートに繋げられると感じます。

小学校で困らないで楽しく過ごすために

連携は、小学校が園を見るだけではない。あすか保育園側も、小学校の授業や給食を見学している。

小学校の授業や給食を知ることは、園で小学校の先取りをするためではない。子どもが安心して入学できるよう、生活の流れや必要な経験を知るための取組になっている。

あすか保育園職員

  • 子どもたちが小学校で困らないで楽しく過ごすために、小学校で就学する前に体験しておいた方が良い事などを知ることができ、子どもたちのギャップを埋めることができるという気づきがありました。
  • 給食参観では、子どもたちが意欲的に取り組み気を付けながら運ぶ姿が印象的だった。国語の授業ではクイズ式でとても分かりやすかった。子どもたちが興味をもって取り組む工夫はいつでも必要だと思いました。
  • 小学校に入ってからの生活の流れや習慣、学習などが具体的に分かって、就学までにどこを育てられたらいいかを考えさせられる。
小学校の先生が園児と関わり、職員が野菜を使った活動を行っている様子
小学校の先生たちの保育体験の様子。園児との関わりや保育活動を通して、園での子どもの姿を知る取組が行われている

園児のために何をしたいか

少林寺小学校では、1年生の児童と園児の交流も行われている。以下は堺市立少林寺小学校・阿部仁先生の一問一答。

Q1

少林寺小学校として、あすか保育園との連携で大切にしていることは何ですか。

少林寺小学校が連携(交流活動の計画・実践)において特に大切にしているのは、子どもたちの「相手意識」を育てることです。

単に「何をするか(活動内容)」を決めるだけでなく、1年生の児童自らが「園児のために何をしたいか」「そのためにはどのような準備をすればよいか」を主体的に考え、園児に寄り添い、優しくリードできるように準備の段階から意識させています。これにより、園児に小学校を楽しみにしてもらうと同時に、児童自身も「誰かのために行動する達成感」を得られるような交流を重視しています。

Q2

小学校の先生が園の保育を見ることには、どのような意味があると感じていますか。

「遊びの中にある学び」や「主体的に活動する園児の姿」を目の当たりにし、それを小学校の教育環境やアプローチに還元・導入できる点に大きな意味を感じています。

具体的には、これまで閉鎖的で見えづらかった園の保育活動を知る第一歩となり、園児が好きな遊びを通じて関係を深めたりルールを学んだりする姿から、小学校でも取り入れられる工夫(例:教室の後ろにじゅうたんを敷いて安心できる居場所を作るなど)に気づくきっかけとなっています。

Q3

園での子どもたちの姿を知ることで、1年生を迎える側としてどのような気づきがありますか。

大きく分けて以下の2つの気づきがあげられています。

  • 環境移行への気づき(緩やかな移行の必要性):園での「遊びからの学び」を知ることで、ルールやマナーを教える小学校の体制へと一気に変化させるのではなく、環境にじゅうたんスペースを取り入れるなど、安心感を持たせながら緩やかに移行していく工夫の必要性に気づいています。
  • ねらいの共有への気づき:1つ1つの活動で子どもたちの成長は見られたものの、今後は「互いの子どもの実態や活動内容」をより深く知り、園と小学校の課題や「育てたい子ども像」に迫るような、ねらいを共有した活動づくりが必要であるという気づきに繋がっています。

Q4

園側が小学校の授業や給食を見ることについて、小学校側ではどのように受け止めていますか。

互いの教育・保育活動を知り、これまでにない有意義な情報共有ができる貴重な機会として、非常に前向きに受け止めています。

参観後の意見交流会を通じて、ひらがなの学習方法や声掛けの意識、さらには「トイレ指導」や「給食の進め方」といった具体的な生活指導面での疑問を解消し合えるなど、お互いの良さや疑問を広く共有できる有意義な場であったと捉えています。

Q5

今後、あすか保育園とどのような関係を深めていきたいですか。

今後は、これまでの取組をさらに一歩進め、以下のような関係・連携を深めていきたいと考えています。

  • ねらいと課題の共有:互いの子どもの実態をさらに深く知り、目指す子ども像やねらいを共有した、より意味のある連携活動をつくっていく関係。
  • 緩やかな移行(ギャップの解消):園と小学校の良さをそれぞれ残しながら、子どもたちが一気に変化する環境に戸惑わないよう、緩やかな移行を支える連携体制の構築。
  • 特色ある教育での連携:少林寺小学校の特色である「キャリア教育」や「多文化理解教育」を生かし、体験活動を中心としたカリキュラムを保幼小で連携して展開していく関係。

保護者の不安も軽く

子どもたちの変化は、保護者の安心にもつながっている。小学校入学を前に、不安を感じるのは子どもだけではない。園と小学校がつながっていることは、保護者にとっても安心材料になっているようだ。

あすか保育園職員

  • 小学校に行くことを楽しみにしていると感じる変化がありました。
  • 小学校は楽しいところだと感じ、入学への期待やワクワクする気持ちを持ち小学校への興味や関心が高まりました。
  • 子どもだけでなく、保護者の方も小学校へ行く不安な気持ちは少し軽減され、学習だけでなく楽しく過ごせる場所であるということが分かってきたと思います。

地域で育ちをつなぐ

今後について、あすか保育園の職員からは、地域全体で子どもの育ちをつなぎたいという声が出ている。

あすか保育園職員

  • 他の学年の小学生とも関わっていき、地域のみんなで子どもたちの育ちを繋げていきたいです。
  • 子どもたちが小学校について知り、体験する機会を増やしていきたい。また、保育園と小学校の情報共有をより密にし、一人ひとりに合った支援に繋げていきたいです。

また、柏木園長は、少林寺小学校との合同研修で、子どもへのネグレクトが言語能力やコミュニケーション能力に影響することを学んだことにも触れ、園としてできることを考えたという。

「改めて園でできることは何かな?と、考えさせられました。こどもたちが卒園しても、寄りどころになる園づくりをしたいです」(柏木愛園長)。

園と小学校の関係が変わる時代に

幼保小接続支援事業では、園で育ってきた子どもの姿を小学校へ伝え、小学校での生活を園側も知る。先生同士が互いの現場を理解し、子どもが安心して次の場所へ進めるようにする。

かつての小学校と保育園の関係は、ずいぶんと変わった。交流の積み重ねが、子どもの育ちを校区でつなぐ橋になっている。

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