私立にも届いた少子化
6月に意外とよく読まれた記事の一つに、初芝橋本高校の募集停止の記事があります。ざっくりですが、その記事は1万人くらいの人に読まれていました。おそらく、多くの人がこう感じたのではないでしょうか。――少子化の影響が、ついに私立にまで来たか、と。
サカイタイムズ記事:初芝橋本高等学校が2027年度以降の募集停止を決定
これまで、高校の再編や募集停止は、公立が中心でした。大阪府による私立高校の無償化の影響と見られていましたが、初芝橋本高等学校の募集停止からは、少子化が私立にまで及んでいることがわかってきました。
積み重なって見えてくるもの
個々のニュースは、小さいものです。けれど、それを毎日並べていくと、単発では見えない輪郭が浮かんできます。街がどこへ向かっているのか、という輪郭です。その縮小が、いま最も分かりやすい形で表れているのが「学校」だと思います。
堺高校の再編と、一通の連絡
5月25日、堺市は「令和10年度から堺高校が新しくなります」というタイトルで、堺市のHPに「堺高校のあり方【学校改革の実施計画】」という資料を公表しました。サカイタイムズも一読して、記事にしました。
サカイタイムズ記事:少子化と志願者減で堺高校が学科再編へ
ところがその後、サカイタイムズの情報提供フォームから、堺高校の学校関係者と思われる方から、次のような連絡が来ました。
「堺高校のサイエンス創造科が募集停止になりそうです。堺の子どもたちの学びの場が、美原高校、福泉高校のついでなくなりそうです。少子化対策は学びの選択肢のスリム化でなく、学級定員を減らすことで対応しておくべきです」
その後、堺市議会文教委員会で堺高校が取り上げられていると知らされ、私は6月9日の文教委員会での議員の発言などを確認しました。一部の議員から、懸念や存続を求める声が出ています。そこで見えてきた堺高校をめぐる議論の構図は、「延命 vs 効率化」でした。
はたして、この構図は正しいのでしょうか。疑問に思ったので、改めて資料を読んでみました。本編_堺高校のあり方【学校改革の実施計画】
データは衰退を語り、言葉は勇ましい
巻末の参考資料には、正直な数字が並んでいます。
全日制の志願倍率:令和8年度で0.84倍
募集停止となるサイエンス創造科:定員40人に対して、第一志望は19人
将来推計:志願者は185人前後まで減少
データは、衰退をきちんと語っています。
ところが、計画(本編)の本文はどうでしょうか。並んでいるのは、こんな言葉です。
「堺高校版STEAM教育」
「アントレプレナーシップ」
「デザイン思考」
「真に選ばれる高校へ進化」
「次代を切り拓く専門人材」
……横文字など今風を取り入れつつ、言葉も勇ましいのです。隠しているとまでは言いませんが、戦時中、劣勢を「転進」と言いかえた大本営発表のように、堺高校の「縮小」を「改革」と言いかえているようにも感じました。なぜ選ばれないのか、その分析は、資料にはありません。
何を残すのか
正直に書けば、統廃合そのものは、避けられないのかもしれません。子どもの数が、私の世代のおよそ3分の1になっていく社会で、学校が減り、教員が減るのは必然です。そこから目をそらしても、仕方がないからです。
ただ、問いは「延命か、効率化か」ではないと思います。学級を小さくして残す、という延命策は、根本の解決ではありません。そもそも堺高校は、4つの市立高校を統合して作られた再編校だからです。
かといって、学科の名前を変えれば選ばれる、というのも違います。本当に問うべきなのは、何を残そうとしているのか――学科の名前なのか、カリキュラムなのか、そこでしか得られない学びそのものなのか、ということです。
もっと、先生や生徒に自由を持たせてはどうでしょうか。裁量権を与えるべきです。いろいろな制約のなかで先生方が試行錯誤しても、定員割れの高校になってしまっているわけですから。
少人数制にして延命を図る方法は、いずれ立ち行かなくなると思います。驚くようなカリキュラムや学科、他府県からも通いたくなるような、魅力的な高校になることが筋です。そして、堺市の人から愛される高校が、一番長続きします。一見、無駄だらけの高校でも、大勢の市民が「必要」と判断すれば、行政は残します。
誰が、どう決めるのか
けれど、いまの堺市民は、その判断材料すら持っていない状態です。
縮んでいく街では、これから「何を残し、何をたたむか」の選択が、いくつも来ます。商店街も、図書館も、公共施設も。そのたびに、「少子化による効率化」の旗の下で結論を包むのは、よくないことでしょう。人は、効率だけで生きているわけではないからです。思い出などの感情や、誇り、愛着や伝統に、価値を認めて生きています。
この堺高校の再編は、縮んでいく堺の、1つにすぎません。1つ1つを、知らないまま決まっていくのか、知って、問える街になるのか。その違いは、たぶん、これから何度も堺高校以外のことでも試されることになるでしょう。
サカイタイムズは、その判断材料を、見える形にしていきたいと考えています。
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