市長が各局区長に予算編成方針を示す
堺市は10月8日、2027年度(令和9年度)の当初予算編成方針を公表した。市長が各局区長に示した文書で、「将来にわたる堺の成長」に重点を置いている。
発表された資料は、各部署が来年度の予算を組む際の方針を示したもの。個別事業の予算額、対象者、開始時期などは記載されていない。
今回の当初予算編成方針は「堺市基本計画2030」の実現に向け、市民生活を支える取組と、堺の将来を見据えた投資を進める方針。
予算づくりの基本となる4つの考え方
資料全体では、次の4つを基本的な考え方としている。
- 安心できる堺の確保
- 堺の未来への挑戦
- 定住・交流・関係人口の誘導促進
- 構造改革の推進
以下、市民の暮らしに関わる項目から内容を整理する。
子育て|妊娠・出産から継続して支援
安心してこどもを生み育てられるよう、妊娠・出産期から子育て全般を支える方針を掲げている。多様で質の高い保育サービスや放課後児童対策事業などを提供し、こどもが健全に成長できる環境をめざす。
こどもの居場所|いじめ・不登校・家庭の課題に対応
貧困、児童虐待、いじめ、不登校など、こどもと家庭が抱える状況に応じて支援する。すべてのこどもが安心して過ごし、学べるよう、居場所と多様な学びの機会を確保する。
「社会的養護」を必要とするこどもや家庭への支援体制も強化する。社会的養護とは、保護者による養育が難しいこどもを社会全体で養育・保護し、養育に困難を抱える家庭も支えることをいう。
学校|9年間の学び、施設更新、給食
総合的な学力向上をめざす取組に加え、「学校群」による教育活動を進める。学校群は、中学校区内で義務教育9年間を見通し、こどもの学びと育ちを支える取組。
学校の規模・配置の適正化も掲げている。教員の育成や学校を支える体制の充実、老朽化した学校施設の計画的な更新、安全・安心でおいしい学校給食の提供を通じ、教育環境を整える方針。
健康・介護|身近な相談と医療の連携
高齢者や障害者などへのきめ細かな支援、社会参加の機会の確保、身近な相談支援体制の充実を図る。また、健康的な生活習慣づくりとともに、市民が早い段階から健康に関心を持ち、自分の健康状態を把握するよう促す。
地域医療体制の充実や在宅医療と介護の連携強化を進め、「健康寿命」の延伸につなげる。健康寿命は、健康上の問題で日常生活が制限されずに暮らせる期間を指す。
福祉|孤独・孤立や複数の生活課題を支える
孤独・孤立などの課題に対し、子育てや福祉の分野を横断した支援と、地域の支え合いを重視。また、「重層的な支援体制」の強化を掲げており、複数の分野にまたがる生活課題を受け止め、必要な支援や社会とのつながりにつなぐ体制をめざす。
なお、本人の権利や意思を守る「権利擁護支援」も進め、一人で困難を抱え込まず、安心して暮らせる環境をめざす。
防災・防犯|地震・風水害、特殊詐欺への備え
南海トラフ巨大地震や上町断層帯地震などの大規模地震、風水害に備え、情報連携や「受援・応援体制」を充実させる。受援とは、外部からの支援を受け入れること、応援は被災した地域などを支援することを指す。
防犯では、地域や警察と連携し、特殊詐欺をはじめとする大阪重点犯罪の被害防止と治安の向上を図る。地域活動への支援、道路・公園などの適切な管理も進める方針。
公共施設|ミュージアム・図書館、老朽施設の更新
(仮称)堺ミュージアムや中央図書館の整備を掲げている。
道路や上下水道などの都市インフラと公共施設は、将来にわたる安全性を確保するため、維持管理・更新を計画的に進める。次期清掃工場や上下水道施設など、老朽化した施設の更新も盛り込んでいる。
まちづくり|都心部・泉北、交通、空き家対策
堺都心部では、歴史文化資源の活用や、行政と民間が協力する「公民連携」による取組を進める。文化観光、産業振興、都市開発、公共交通などの分野が連携し、住民や来訪者に選ばれる都市空間をめざす。各事業を着実かつ迅速に進め、進捗を分かりやすく発信する方針だ。
また、泉北ニュータウン地域をはじめ、各地域の特性や可能性を生かした都市空間づくりも掲げている。新たな交通環境や都市基盤の整備、空き地・空き家対策も進めるとしている。
暮らしに関わる内容を整理すると
ここまでの主な項目は、次のように整理できる。
- 子育て: 妊娠・出産からの支援、保育、放課後児童対策
- こどもの支援: 貧困・虐待・いじめ・不登校への対応、居場所と学びの確保
- 学校: 学校群、規模・配置の適正化、施設更新、学校給食
- 健康・福祉: 高齢者・障害者支援、相談、医療・介護の連携、孤立への対応
- 安全: 地震・風水害への備え、防犯、道路・公園の管理
- 都市整備: ミュージアム・図書館、公共施設更新、都心部・泉北のまちづくり、交通、空き地・空き家対策
財政|単年度黒字でも、経費の増加を見込む
堺市は2025年度(令和7年度)決算の単年度収支は黒字となった一方、「経常収支比率」は依然として高い水準にあった。
経常収支比率は、毎年入る税収などの一般財源が、人件費や福祉、借入金の返済など、毎年必要な経費にどの程度使われているかを示す指標。高いほど、新たな施策などに使える財源の余地が小さくなる。
今後も物価高騰に加え、人件費、扶助費、公債費などの増加を見込む。扶助費は福祉制度などに基づく支援の経費、公債費は借入金の元金返済や利払いの経費を指す。
こうした状況でも質の高い住民サービスを提供しながら、人口誘導や「税源涵養」につながる戦略的な投資を進める。税源涵養とは、地域の経済活動などを通じ、税収を生む基盤を育てること。
予算の組み方|根拠を確かめ、既存事業も見直す
事業は「EBPM」の観点から、根拠となる情報や指標を使って定期的に分析・評価する。EBPMは、データなどの根拠に基づいて政策を検討する考え方。
新規・拡充事業は「スクラップアンドビルド」を基本とする。既存事業の見直しや再構築と、新たな取組を組み合わせる考え方で、前例にとらわれず中長期的な視点で検討する。
事業の目的やめざす姿、既存事業との役割分担、施策全体での位置づけ、関連する施策との関係を明確にして予算要求に反映する。
各局区長には、部署を超えた連携を前提に企画・立案し、自ら先頭に立って調整するよう求めている。
財源確保|補助金や外部資金を活用
国の動向や他市の事例を調べ、補助金、企業版ふるさと納税、外部資金の獲得などを進める。企業版ふるさと納税は、企業の寄付を自治体の地方創生事業に活用する制度。
新たな資金の開拓や、基金の運用で得られる収益の確保にも取り組む。すべての職員が財源確保への意識を高め、部署や施策を横断した視点で、収入の増加を念頭に置いた事業を検討・立案するとしている。
このほかに掲げた方針
暮らし・教育・都市整備に加え、次の内容も盛り込まれている。
- 歴史文化・観光 古墳群、茶の湯、自転車などを継承・活用し、他自治体や観光関連団体と連携して来訪、市内周遊、観光消費の拡大につなげる。文化芸術・スポーツに触れる機会や、国内外への魅力発信も充実させる。
- 伝統産業・万博のつながり 堺打刃物、注染・和晒、線香などのブランド力向上、販路開拓、後継者育成を進める。万博で得た各国・企業とのつながりや挑戦の経験を、今後に受け継ぐ成果である「レガシー」として施策に生かし、こどもの国際的な視野や地域への愛着を育む。
- 企業・雇用・農業 中小企業支援や、社会課題の解決に取り組む事業者の育成、交流・共創、先進技術への挑戦を後押しする。ICT(情報通信技術)、健康・医療、環境・エネルギーなどへの投資、産業用地の確保、企業立地を促し、市内産業との連携と雇用創出につなげる。人材確保・就労支援、担い手育成を含む農業支援も行う。
- 定住・交流・関係人口 大阪府や南大阪の市町村との連携、民間の力を生かし、各区・エリアの特色を定住につなげる。観光などで訪れる「交流人口」と、住んでいなくても地域に継続的に関わる「関係人口」を増やし、地域経済の活性化、課題解決、将来の移住につなげる。
- 行政改革・デジタル化 生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少を見据え、財政基盤、住民サービス、行政資源の使い方に加え、制度・仕組み・組織運営を見直す。デジタル技術で業務やサービスを変える「DX」や、文章などを作成する「生成AI」を活用し、市民の利便性と事務効率の向上を図る。
- 社会変化・脱炭素への対応 ダイバーシティ(多様性)の視点から事業を組み立て、賃金・物価上昇を事業者が受注価格に適切に反映できるよう対応する。市民・企業と連携し、温室効果ガスの排出量と吸収量などを差し引きして実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向け、社会の仕組みの転換を進める。
出典:堺市「令和9年度当初予算編成について」
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