公立定員割れ、堺市の高校で起きている順番のズレ
―― 編集長コラム 第13回 ――
連載・コラム


定員割れを可視化
3月は高校受験があり、堺市内の公立高校定員割れの以下の記事は2本で8万人以上に読まれました。サカイタイムズは堺市民向けのメディアなので、堺市にある公立高校への関心の高さがそのまま数字に表れています。
記事:令和8年度 堺市内公立高への出願、3校以外はほぼ無競争
記事:鳳・堺上・堺工科など堺市内5高校で二次募集 学力検査なし
おそらく堺市民のみなさんは、すでにこの状況を感覚としては知っていたはずです。ただそれが具体的な数字と学校名で可視化されたことで、一気に現実として認識されたのだと思います。これまで堺市単位で網羅的に伝えるメディアがなかったことも大きいのでしょう。
福井県の人口 約73万人:福井新聞・福井テレビ(県の地方紙・ローカル局)
堺市の人口 約80万人:なし(大手新聞・テレビにとって堺は関西広域の一部)
鳳高校の定員割れも、全国紙の関西版では大阪全体の一部として報じられていただけでした。しかし実際に堺市内だけに限定して網羅してみると、堺市内の公立高校の定員割れの現実は、鳳高校だけではなかったのです。
私立無償化と“順番のズレ”
私立高校の無償化は、大阪維新の会が肝いりで始めた政策です。政治的に維新を嫌っている人からすると「ほら見たことか、だから公立高校が定員割れするのだ」と考える人は少なくないかもしれません。
もちろんその側面はあります。ただ、もっと現実を見ると、順番が少し変わっただけに過ぎません。つまり、公立も私立も再編・閉校は避けられないということです。堺市の年齢別の人口を見れば明らかだからです。
人口構造が示す縮小の不可避性
堺市の年齢別人口
令和8年2月末現在(出典:堺市 年齢別人口統計表 令和8年2月末)
総数男女
0歳 4,889人
1歳 5,018人
2歳 5,188人
3歳 5,412人
4歳 5,524人
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50歳 12,927人
51歳 13,904人
52歳 14,697人
53歳 14,232人
54歳 14,299人
なぜ50歳代との比較をしたかといえば、この年代が最も人口のボリュームが大きいからです。見ての通り、堺市の0歳人口は5千人を切っており、50歳代の人口と比較すると3分の1程度になっています。もちろん一気に減ったわけではなく、50歳代から徐々に減っていって現在の0歳の人数になっています。
子どもの数が減れば、学校も減る。これは自然な流れです。しかし現実には、私立高校無償化によって私立への進学が維持され、公立から先に空きが目立つようになっています。本来は全体が縮小していくはずのところで、一部だけが先に崩れている。この“順番のズレ”が、いまの状況です。
私立高校の役割の変化
私立高校は、公立高校だけでは受けきれなかった需要を補う形で増えてきました。私たちの世代(筆者は52歳)からすると「公立高校を落ちたから私立高校に行った」「公立高校が受かりそうにないから私立高校の推薦で先に合格を決めた」という話はよく聞いたものです。つまり、私立高校は公立高校の定員オーバーの受け皿にもなっていたのです。
ところが現在、堺市の0歳から4歳までの人口は50歳代の約3分の1。いずれ高校の数は3分の1になってもおかしくはありません。本来は利潤も求める民間の私立高校から閉校が始まる構造でしたが、私立高校無償化という政策によって公立高校から先に始まったということです。
私立高校無償化のメリットを挙げると以下のようになります。
・機会の平等(家庭差の解消)
・選択の自由
・競争で質向上
もし公立高校が一切なくなり、大阪に私立高校だけが残れば、それは私立高校の無償化ではなく、「私立高校の公立化」ということになるだけですが、公立高校は地域インフラでもあるのでそうはならないと考えています。
ただし、おそらく私立も同じ問題に直面します。人口構造で決まっている以上、この流れは変えようがありません。現実としては「どちらが早いか遅いかという違い」ということでしょう。
税の使い方という視点
少し横道にそれるかも知れませんが、この税の使い方という点で、海外と比較すると見え方が変わります。
ちなみに私が住むニューヨークで私立高校の無償化はありえない政策です。税金の使い道を見る目が、大阪の人よりニューヨークの人のほうが厳しいからです。私立高校無償化について、ニューヨーク市民の考えを大阪弁で書くとするなら「なんでわたしの収めた税金が知らん子の私立高校へ行くためのお金に使われなあかんねん。公立があるやろ。我が子を私立に行かせたければ親が稼がんかい」ということになります。
行政が集めて使う税金は、税の再分配ですから、税の使われ方に厳しいニューヨークでは大阪とは違いそういう議論になります。また、ニューヨークではその先に社会全体にどんなリターンがあるのかの説明が求められます。
税で支える以上、いずれ社会全体の利益として還ってこなければ(もしくは還ってくる前提でなければ)通らない政策になります。例えば、治安が安定する、労働力の質が向上する、あるいは税収増に繋がって市民サービスが向上する、などです。このあたりが説明できないからニューヨークで私立高校の無償化ができないということでもあるのでしょう。
AI時代と教育のズレ
最後に、AI時代と教育は無縁ではないと感じています。高校進学がほぼ当たり前になり、進学は大学まで続く流れになっています。しかしその一方で、働き方は大きく変わり始めています。
事務や資料作成のような仕事はAIで代替が進みますが、ロボットで代替できない建設や介護、設備といった現場の仕事は人の手に依存したまま残ります。そうした背景もあり、以下のサカイタイムズの記事も多くの人に読まれたのかもしれません。
記事:近畿大学に新学部「看護学部」4月開設
現実を共有する意味
はたして私立高校の無償化はAI時代においてもマッチしているのか。堺市の将来はどうなっていくのか。いずれにしても、現実を見ることは次に進むための前提になります。サカイタイムズで報じた「堺市内の公立高校の定員割れ」の記事は、決して明るい話ではありません。しかし多くの人に読まれ、現実が共有されたことで、堺市民の認識は確実に一段進んだと感じています。
2026年4月1日
サカイタイムズ編集長
笹野 大輔
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画像:筆者。WBCで日本代表の応援でマイアミに行きましたが負けました(^_^)




